MAGTROL TORQUE 10をWindows 11にインストールするとブルースクリーンが発生する — 原因と解決方法
症状
Windows 11 Proの新品パソコンに、計測ソフトウェア MAGTROL TORQUE 10 をインストールして再起動すると、ブルースクリーン(BSOD)が発生してWindowsが起動しなくなる。
ブルースクリーンには以下の情報が表示される。
Stop code: SECURE_PCI_CONFIG_SPACE_ACCESS_VIOLATION (0x1EA)
What failed: nipcibrd.sys
自動修復から復旧を試みても、同じブルースクリーンが繰り返し発生する。
原因
nipcibrd.sys とは何か
nipcibrd.sys は、National Instruments(NI)製の PCI ブリッジドライバである。
名前を分解すると NI + PCI + BRD(Bridge Driver)で、PCの内部バス(PCIバス)を管理する役割を持っている。
PCIバスの設定領域(コンフィグレーション空間)に直接アクセスして、接続されているハードウェアの構成を把握するために使用される。
MAGTROL TORQUE 10 は NI のドライバを同梱しており、インストール時にこのドライバが自動的にインストールされる。
なぜブルースクリーンが発生するのか
Windows 11 は、カーネルDMA保護やメモリ整合性などのセキュリティ機能が強化されている。
Stop Code 0x1EA(SECURE_PCI_CONFIG_SPACE_ACCESS_VIOLATION)は、ドライバが PCI設定領域に直接アクセスしようとしたことを、Windows 11 のセキュリティ機能が違反として検出・遮断したことを示している。
古いバージョンの NI 製 PCI ブリッジドライバは、Windows 11 の新しいセキュリティポリシーに対応しておらず、このドライバがカーネルに読み込まれた時点でブルースクリーンが発生する。
この問題は MAGTROL 固有の問題ではなく、NI 製ドライバ(LabVIEW系ソフトウェア)全般で Windows 11 上で発生している既知の問題である。
NI のコミュニティフォーラムでも、同じブルースクリーンに悩むユーザーの報告が多数存在する。
解決方法
正規代理店への相談(最も確実な方法)
MAGTROL の日本国内正規代理店である株式会社東陽テクニカに相談したところ、Windows 11 に対応した新しいインストーラーを準備・提供していただけた。
提供されたインストーラーを使用してインストールしたところ、ブルースクリーンは発生せず、TORQUE 10 が正常に起動した。
インストーラーの About 画面には Windows 7SP1/10/11(32-bit or 64-bit Operating System)と明記されており、Windows 11 が正式サポートの対象であることが確認できた。
MAGTROL の日本国内正規代理店は株式会社東陽テクニカである。
問い合わせ先は東陽テクニカの公式サイトで確認できる。
問い合わせの際には、以下の情報を添えて相談すると良い。
- 機器の型番(例:TS107 など)
- 現在使用中のソフトウェアバージョン
- 発生しているエラーの内容(Stop Code と失敗したドライバ名)
- Windows のバージョン(25H2 など)
- 機器との接続方式(USB / PCI カード / RS-232 など)
旧インストーラーでインストールしてしまった場合の復旧
旧バージョンのインストーラーで TORQUE 10 をインストールしてブルースクリーンが発生した場合、以下の手順で復旧できる。
- ブルースクリーン発生後、自動修復画面が表示される
- 「詳細オプション」→「トラブルシューティング」→「詳細オプション」
- 「スタートアップ設定」→「再起動」→「4」キー(セーフモードを有効にする)
- セーフモードで起動後、TORQUE 10(および NI ドライバ)をアンインストール
- 通常モードで再起動し、正常に起動することを確認
復旧後は、旧インストーラーでの再インストールは行わず、正規代理店から最新のインストーラーを入手してから再インストールすること。
自動修復からセーフモードに入れない場合
自動修復が繰り返し失敗する場合は、Windows のインストールメディア(USB)から起動し、「コンピューターを修復する」→「トラブルシューティング」→「詳細オプション」からセーフモードまたはシステムの復元を選択する。
インストール前に復元ポイントを作成していた場合は、「システムの復元」でインストール前の状態に戻すこともできる。
インストール時にVC2008エラーが発生する場合
正規代理店から提供された最新インストーラーであっても、以下のエラーが発生する場合がある。
NI VC2008RTE x64 のインストールに失敗しました
エラーコード: 0x80070091
原因
このエラーは、Microsoft Visual C++ 2008 ランタイム(VC2008)のインストール時に発生する。
エラーコード 0x80070091 は「ディレクトリが空でない」ことを示しており、すでに同バージョンまたは互換のランタイムがパソコン上に存在している場合に発生することがある。
Visual C++ ランタイムはバージョンごとに独立してインストールが必要な仕様になっている。
2008・2010・2012・2013・2015-2022 はそれぞれ別のコンポーネントであり、新しいバージョンが古いバージョンを代替することはない。
TORQUE 10 は LabVIEW で開発されており、ビルド当時の LabVIEW ランタイムが VC2008 に依存しているため、このコンポーネントが必要になる。
対処方法
VC2008 の最終版がすでにインストール済みの場合
「アプリと機能」で「Microsoft Visual C++ 2008」を検索し、バージョン 9.0.30729.6161(SP1 + MFC セキュリティ更新済みの最終版)がインストールされているか確認する。
すでにインストール済みであれば、TORQUE 10 のインストーラーが同梱している古いバージョンの上書きに失敗しているだけであり、TORQUE 10 本体の動作には支障がない可能性がある。
旧インストールの残骸が残っている場合
以前のインストール失敗による残骸ファイルが邪魔をしている場合がある。
以下のフォルダに NI_VC2008_RTE または VC2008 という名前のフォルダが残っていないか確認する。
C:\ProgramData\National Instruments(隠しフォルダ)C:\Program Files\National InstrumentsC:\Program Files (x86)\National Instruments
見つかった場合は、正規代理店に連絡して対応を相談すること。
自己判断での削除はサポート対象外になるリスクがあるため推奨しない。
VC2008 を手動でインストールする方法
Microsoft 公式の SP1 MFC セキュリティ更新版を手動でインストールする方法がある。
ダウンロード先: https://www.microsoft.com/en-us/download/details.aspx?id=26368
ファイル名は vcredist_x64.exe(64bit 用)で、SP1 + MFC セキュリティ更新適用済みの最終版である。
サードパーティサイト(Softonic 等)からのダウンロードは、改ざんされたファイルが配布されているリスクがあるため避けること。
正規代理店の対応で解決しない場合に試せる方法
正規代理店への相談が最も確実な解決方法だが、状況によっては追加の対処が必要になる場合がある。
以下は、正規代理店のサポートと並行して検討できる方法である。
いずれの方法も、正規代理店に相談した上で実施することを推奨する。
独自に実施した場合、サポート対象外になる可能性がある。
PXI Platform Services の更新
NI のコミュニティフォーラムにて、「PXI Platform Services を最新版に更新することでブルースクリーンが解消した」という報告が複数存在する。
PXI Platform Services のダウンロード先: https://www.ni.com/en/support/downloads/drivers/download.pxi-platform-services.html
TORQUE 10 のインストーラーが古いバージョンの PXI Platform Services を同梱しているため、インストール後に手動で最新版を上書きインストールすることで解消が期待できる。
具体的な手順は以下のとおり。
- TORQUE 10 をインストールする
- 再起動を促されるが、ここでは再起動しない
- PXI Platform Services の最新版をインストールする
- インストール完了後にまとめて再起動する
再起動前に新しいドライバで上書きすることで、起動時に新しいドライバが読み込まれるという仕組みである。
nipcibrd.sys ドライバの削除(USB接続の場合)
機器との接続に USB を使用している場合、nipcibrd.sys は不要である可能性が高い。
nipcibrd.sys は PCI スロットに直接差し込むタイプの NI 製ハードウェア(PCI-GPIB カードなど)のためのドライバであり、USB 接続の機器ではこのドライバを通じたバス管理が必要ない。
| 接続方式 | nipcibrd.sys | 備考 |
|---|---|---|
| PCI スロットの GPIB カード(PCI-GPIB) | 必要 | 今回問題になっているドライバ |
| USB-GPIB アダプタ(GPIB-USB-HS) | 不要 | USB ドライバで動作 |
| USB 直結 | 不要 | — |
| RS-232(シリアル) | 不要 | — |
| Ethernet | 不要 | — |
NI Package Manager からは個別に削除できないため、MSI ファイルを直接実行して削除する。
- セーフモードで起動する(ブルースクリーンが発生している場合)
- 以下のフォルダを開く:
C:\Users\All Users\National Instruments\MDF\ProductCache\ - 「NI-PCI Bridge Driver」という名前のフォルダを探して開く
pciBrdI64.msi(64bit 用)をダブルクリックする- インストーラーが起動したら「Remove(削除)」を選択して実行する
- 再起動する
nipcibrd.sys 削除時の注意事項
NI-PCI Bridge Driver フォルダ名の末尾にはバージョン番号が付いている場合がある(例: NI-PCI Bridge Driver [1.0.00000])。
NI Package Manager から削除しようとすると、大量の依存関係も一緒に削除されてしまうため、必ず MSI ファイルから直接削除すること。
PXI Platform Services を更新すると自動的に再インストールされる場合があり、その際は同じ手順で再度削除が必要になる可能性がある。
NI 関連コンポーネントの一括削除と再インストール
旧インストーラーの残骸が原因でインストールが失敗する場合、NI 製アンインストーラー(NIUninstaller)で NI 関連コンポーネントを一括削除してからインストールをやり直す方法がある。
NIUninstaller は以下のパスに存在する場合がある。
C:\Program Files\National Instruments\Shared\NIUninstaller\uninst.exe
または
C:\Program Files (x86)\National Instruments\Shared\NIUninstaller\uninst.exe
「ファイル名を指定して実行」(Win + R)にパスを貼り付けて実行できる。
NI 関連コンポーネントをすべて削除した上で、正規代理店から提供されたインストーラーで再インストールを行う。
Windows セキュリティ設定の変更(最終手段)
上記の方法で解決しない場合、Windows のセキュリティ設定を変更することでブルースクリーンを回避できる可能性がある。
ただし、セキュリティレベルが低下するため、IT管理者として慎重に判断する必要がある。
メモリ整合性の無効化
- 「Windows セキュリティ」→「デバイス セキュリティ」→「コアの分離」
- 「メモリ整合性」をオフにする
- パソコンを再起動する
- TORQUE 10 をインストールする
インストール後にメモリ整合性をオンに戻すと、ブルースクリーンが再発する可能性がある。
カーネルDMA保護の無効化(BIOS設定)
BIOS/UEFI 設定で Kernel DMA Protection(または VT-d / IOMMU)をオフにする方法もあるが、セキュリティが大幅に低下するため推奨しない。
復元ポイントの活用
TORQUE 10 のインストール前に復元ポイントを作成しておくと、問題が発生した場合に安全に元の状態に戻すことができる。
復元ポイントの作成方法
- スタートボタンを右クリック →「システム」
- 左ペインの「システムの保護」をクリック
- 「システムのプロパティ」が開いたら「システムの保護」タブを選択
- 「作成」ボタンをクリック
- 復元ポイントの名前を入力する(例: TORQUE 10 インストール前)
- 「作成」をクリックして完了
復元ポイントの機能が有効になっていない場合は、C ドライブを選択して「構成」から「システムの保護を有効にする」をオンにしてから作成する。
ブルースクリーンで起動できない場合の復元方法
- 起動失敗後に自動で「自動修復」画面が表示される
- 「詳細オプション」をクリック
- 「トラブルシューティング」→「詳細オプション」
- 「システムの復元」を選択
- Windows のサインインパスワードを入力
- 作成した復元ポイントを選択して実行
MAGTROL 公式のソフトウェアダウンロード
MAGTROL の公式サイトにソフトウェアダウンロードページが存在する。
公式ダウンロードページ: https://www.magtrol.com/software-downloads/
ただし、公式サイトのダウンロードページで提供されているバージョンが、必ずしも最新の Windows 11 対応版であるとは限らない。
日本国内で使用している場合は、正規代理店である東陽テクニカに相談することで、公式サイトでは公開されていない Windows 11 対応版のインストーラーを入手できる場合がある。
ダウンロード時の注意事項
ダウンロードには ShareFile というサービスを通じて基本情報の入力が必要である。
ファームウェアバージョンによって対応ドライバが異なるため、機器本体のファームウェアバージョンを確認してからダウンロードすること。
使用している機器の型番とファームウェアバージョンが不明な場合は、正規代理店に相談する方が安全である。
まとめ
MAGTROL TORQUE 10 を Windows 11 にインストールした際にブルースクリーン(Stop Code: 0x1EA)が発生する原因は、同梱されている NI 製 PCI ブリッジドライバ(nipcibrd.sys)が Windows 11 の強化されたセキュリティ機能に対応していないことにある。
最も確実な解決方法は、日本国内正規代理店である東陽テクニカに相談し、Windows 11 対応の最新インストーラーを入手することである。
正規代理店の対応で解決しない場合は、PXI Platform Services の最新版による上書きインストールや、USB 接続環境での nipcibrd.sys ドライバの削除といった方法も検討できる。
ただし、これらの方法は正規代理店に相談した上で実施することを推奨する。
いずれの場合も、インストール前に復元ポイントを作成しておくことで、問題が発生してもインストール前の状態に安全に復旧できる。